トルコ流のラク酒の飲み方は、まずラク酒を注ぎ、冷たい水を加えてミルクのように白くし、氷は入れるとしても最後に入れる、というものです。そして小皿料理のあいだにゆっくり口に運びます。白いチーズとメロン、冷製メゼ、海のメゼ、温かい前菜、最後に魚。ラク酒の食卓は、乾杯を繰り返す場ではなく、時間をかけて楽しむ食事なのです。
ここでは初めての方向けに、ラク酒とはどんなお酒か、なぜ色が変わるのか、注ぎ方、メゼが運ばれてくる順番、Yıldızlar のメニューからラク酒に合う料理、そして食卓をより楽しくするちょっとした習慣をご紹介します。
ラク酒とはどんなお酒?
ラク酒(rakı)は、ブドウから造るトルコのアニス風味の蒸留酒です。原産地呼称として保護されており(登録番号136、2009年4月15日から保護)、トルコ特許商標庁が公開している登録文書(トルコ語)には、次のようなルールが定められています。
- アルコール度数は40%以上であること。
- 蒸留器に入るアルコールの65%以上が、トルコで育ったブドウ(生または干しブドウ、またはその両方)だけから造る蒸留酒、スマ(suma)であること。
- 2回目の蒸留は、トルコ産のアニスシード(Pimpinella anisum)とともに、容量5,000リットル以下の伝統的な銅製蒸留器で行うこと。
- ブドウ果汁から瓶詰めまで、すべての工程をトルコ国内で行うこと。
Wikipedia のラク酒の項目(英語)によると、多くのラク酒は45%前後、一部は50%で瓶詰めされています。これほど強いので、ストレートで一気に飲む人はいません。水も含めて、ひとつの飲み物なのです。
ラク酒は、なぜ水を加えると白くなる?
白く濁る正体は、アニスに含まれる芳香成分、アネトールです。アネトールは度数の高いアルコールにはよく溶けますが、水には溶けません。水を加えるとアルコール度数が下がり、溶けきれなくなった油分が無数の小さな粒となって光を散乱させます。こうして透明だったお酒が、数秒で乳白色に変わります。化学では自然乳化と呼ばれ、一般にはウーゾ効果(英語)として知られています。ウーゾ、パスティス、アラックでも同じことが起こります。
この白いグラスから、ラク酒には「アスラン・スュテュ(aslan sütü)」、つまり「ライオンのミルク」という愛称がつきました。トルコ語で人を「アスラン(ライオン)」と呼ぶと、強くて勇敢だという意味になります。ミルクはミルクでも、強い人のためのミルク、というわけです。
ラク酒の注ぎ方と飲み方は?
伝統的な飲み方は2つあります。グラスの中で冷たい水と混ぜる方法と、ストレートのラク酒と冷えた水のグラスを並べ、交互に飲む方法です。初めてなら、混ぜる飲み方のほうが簡単です。イスタンブールの魚料理店でよく見る手順はこちらです。
- 細長いラク酒用のグラスと、水用のグラスをもうひとつ用意します。
- まずラク酒を注ぎます。指1〜2本分で十分です。
- 冷たい水を注ぎ足します。半々くらいにする人が多く、水を増やすほどまろやかで香り高くなります。
- 氷は入れるとしても最後に。昔からの愛好家の多くは氷を使わないか、水のグラスに入れます。ストレートのラク酒に氷を落とすと濁り方がむらになり、アニスの風味が鈍ると言われています。
- 合間に水も飲み、ひと口ごとに何か食べましょう。
アニスがきつく感じたら、水を足せば大丈夫です。薄めのグラスを気にする人はいません。
ラク酒の食卓では、メゼはどんな順番で出てくる?

ラク酒の食卓は、冷たいものから温かいものへ、軽いものから濃いものへと進みます。イスタンブールの魚料理店で一般的な流れは、おおよそ次のとおりです。
- 白いチーズとメロン。 塩気のあるフェタ風のチーズと、冷たく甘いメロンの組み合わせは定番の始まりです。メロンは夏の果物なので、その日にあるか聞いてみてください。
- 冷製メゼ。 オリーブオイルで仕立てた野菜料理やディップ。トレーで運ばれてくることが多く、見て指さして選べます。
- 海のメゼ。 ラケルダやチロズなど、塩漬けやマリネにした魚。
- 温かい前菜(アラ・スジャック)。 イカのフライ、エビのバターソテー、魚のココレチなど。
- 魚。 丸ごと1尾を、グリルなどお好みの調理法でみんなで分け合います。
- フルーツかデザート。 最後にトルコチャイかトルココーヒーで締めくくります。
一度に全部注文せず、数皿ずつ頼むのがおすすめです。食事は長く続くものなので、準備ができたところで温かい料理のタイミングを調整してもらえます。
ラク酒に合うおすすめのメゼは?
アニスは、塩気、酸味、そして少しの油分と相性抜群です。当店のメニューから、ラク酒と昔から相性の良い料理をご紹介します。
| メゼ | どんな料理か | ラク酒に合う理由 |
|---|---|---|
| ハイダリ(Haydari) | にんにくとハーブ入りの濃厚な水切りヨーグルト | ひんやりクリーミーで、アルコールの刺激を和らげる |
| アジュル・エズメ(Acılı ezme) | トマト、唐辛子、玉ねぎを細かく刻んだピリ辛ディップ | 辛さと酸味がアニスの香りを引き立てる |
| シーアスパラガス(Deniz börülcesi) | オリーブオイル、にんにく、レモンで和えた海辺の野草 | 塩気と青さのある海の味。最初の一皿にちょうどよい軽さ |
| ラケルダ(Lakerda) | ハガツオの塩漬けを薄切りにし、赤玉ねぎを添えて | 脂と塩気があり、ラク酒のメゼのお手本 |
| チロズ(Çiroz) | 塩干しのサバにディル、オリーブオイル、酢をかけて | 鋭い味わいで歯ごたえがあり、ひと切れで満足感がある |
| 魚のココレチ(Balık kokoreç) | カリッと揚げた魚に、ルッコラと玉ねぎを添えて温かいまま | 冷たい皿のあいだに、熱々でカリカリのひと休み |
| エビのバターソテー(Tereyağında karides) | バターで焼いたエビ | バターのコクが、すっきりしたアニスと好対照 |
ふたりなら、魚の前に冷製メゼ4〜5皿と温かい前菜1皿で十分です。焼きナスのペースト(パトゥルジャン・エズメ)や、ブドウの葉のご飯包み(ヤプラク・サルマ)を加えるのもおすすめです。
ラク酒に合う魚は?
トルコ語の「ラク・バルック(rakı balık)」、つまり「ラク酒と魚」は、ほとんどひとつの言葉のように使われます。どんな魚でも合いますが、特におすすめの組み合わせがあります。
- 秋の脂ののった魚: アミキリ(ルフェル、ブルーフィッシュ)、ハガツオ(パラムト)、サバ(ウスクムル)をシンプルにグリルで。アニスが脂をすっきりさせてくれます。
- 繊細な白身魚: スズキ(レヴレッキ)、ヨーロッパヘダイ(チプラ)、ターボット(カルカン)、舌平目(ディル)。魚の風味を消さないよう、ラク酒は水を多めにして。
- じっくり火を通す料理: トマトとピーマンで蒸し煮にするブーラマや、瓦焼きの魚。旨みのある汁気には、まろやかなグラスがよく合います。
Yıldızlar では、氷の上の鮮魚ケースから魚を選び、調理法はスタッフと一緒に決めます。魚の料金は季節と重さによって決まるので、グリルにかける前に重さと料金の両方を確認してください。ケースに並ぶ魚は月によって変わります。どんな魚が期待できるかは、イスタンブールの旬の魚カレンダーをご覧ください。
ラク酒のマナー:乾杯、ペース、暗黙のルール
- 「シェレフェ(şerefe)」と言いましょう。 「名誉に」という意味の、定番の乾杯の言葉です。グラスを合わせるときは相手の目を見ます。
- グラスは低めに合わせます。 グラスの下のほうを合わせる人が多く、年下の人やゲストは、敬意を込めて年長者のグラスより少し低い位置で合わせることがあります。
- ゆっくり楽しみます。 ラク酒の食卓は3〜4時間続くことも珍しくありません。飲んで、食べて、話して、また飲む。ラク酒をショットで飲むことはありません。
- 空腹では飲みません。 チーズやメゼが最初に出てくるのはそのためです。
- 主役はお酒より会話です。 トルコの人は、良い食卓が生む長く温かい語らいを「ムハッベット(muhabbet)」と呼びます。
- お酒を飲まない方も。 アイラン、炭酸ミネラルウォーター、搾りたてオレンジジュースでも、メゼの流れは同じように楽しめます。
そして言うまでもなく、ラク酒を飲んだら運転はしないでください。トラムの停留所とフェリー乗り場は、橋から徒歩数分です。
Yıldızlar でラク酒とメゼの席を予約する
Yıldızlar Restaurant は1980年に旧ガラタ橋の上で創業し、現在は新ガラタ橋の下層階、エミノニュ側の端で、ボスポラス海峡に面した場所にあります。毎日10:00から02:00まで営業しており、窓際の席やオープンエア席からは、ユスキュダル、カラキョイ、ガラタ塔が見渡せます。
冷製メゼ、海のメゼ、温かい前菜の全リストはメニューでご覧いただけます。お席はオンラインの予約フォームからご予約ください。10名様から200名様までのグループのお食事は、パーティー・宴会のページをご覧ください。




